肝臓がんの治療

症状

主な症状
  • 腹部のしこり・圧迫感
  • 腹部の痛み・張り
  • 倦怠感
  • 腹水
  • むくみ
  • 黄疸

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期の段階では自覚症状はほとんどありません。

がんが進行すると、腹部のしこりや圧迫感、痛み、お腹の張りなどの症状が見られるようになります。さらに進行すると、肝不全の症状として腹水やむくみ、黄疸、肝性脳症などが起こってきます。

その他には肝硬変に伴う症状として、食欲不振、倦怠感、微熱、便通異常(下痢・便秘)、貧血、こむら返りなどが見られることもあります。

診断方法

主な検査
  • 超音波検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • 生体検査
  • 腫瘍マーカー検査

肝臓がん(肝細胞がん)が正常な肝臓に発生することは稀です。なんらかの原因で慢性肝臓病(慢性肝炎~肝硬変)を発症している場合に肝臓がん発症のリスクが高くなります。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによるウイルス性慢性肝炎、自己免疫異常が関与する慢性肝炎、アルコール多飲による肝硬変、肥満や糖尿病などが関与する非アルコール性脂肪性肝疾患などの基礎疾患をお持ちの方は注意が必要です。

定期的に画像検査を行うことによって、肝臓がん発症の有無をチェックします。画像検査で一番簡便なのは腹部超音波検査(エコー)です。その他腹部造影CT、腹部造影MRIなどで肝内を検索します。腫瘍が見つかった場合は、腫瘍の大きさや個数、場所、腫瘍の性質(造影パターン)などを詳細に検討します。

画像検査で腫瘍が悪性か良性か鑑別がつかないときは、経皮的に針を刺して生検を行います。また肝細胞がんが産生する腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-2)も診断の補助となります。

治療方法

治療は基本的に、日本肝臓学会が作成した肝がん診療ガイドラインに沿って行っています。

肝障害度(肝臓の予備能力)、腫瘍の個数、腫瘍の大きさなどで、推奨される治療法が異なります。(日本肝臓学会のホームページで、治療のアルゴリズムがわかりやすく示されていますので、ご覧になってください)

治療方針は、患者さんの年齢や他の持病の状態なども考慮し、患者さんとよく話し合った上で決定しています。

手術療法

肝臓がんは大きく分けて原発性肝がん(肝細胞がん)と転移性肝がん(大腸がん等からの肝転移)に分類されます。

B型肝炎やC型肝炎から発症する肝細胞がんは原発性肝がんで、肝機能が悪い患者さんが多いため、肝機能評価が治療を行う上で非常に重要です。高度な肝硬変がある場合は内科的治療で血管造影やRFA(焼灼治療)などが行われ、肝機能が良好な患者さんに対しては外科治療(肝切除または焼却)を行っています。

一方、転移性肝がんは一般的に肝機能が良好なため、肝切除による治療が第一選択になります。腫瘍の個数、大きさや位置などで手術が困難な場合は、まず最初に化学療法(抗がん剤)で腫瘍を縮小させたのちに手術を行う場合もあります。

肝がんに対する外科的治療は画像診断、手術器具の発達により以前に比べて安全に施行できるようになっています。外科的治療か内科的治療でお悩みの患者さんはセカンドオピニオンも行っています。

現在、肝臓がんに対しても腹腔鏡下手術を積極的に行っています。

肝動注化学塞栓療法(TACE)

肝細胞がんの多くは肝動脈からの血流によって栄養を受けています。足の付け根の大腿動脈からカテーテルを挿入し、肝動脈までカテーテルを進め塞栓し、同時に抗がん剤を注入することでがん細胞を壊死させます。

穿刺局所療法(経皮的エタノール注入、経皮的ラジオ波焼灼)

超音波やCTなどの機器で腫瘍の位置を確認しながら、局所麻酔後に穿刺針を刺します。エタノール注入の場合は細長い針を穿刺してエタノールを注入、がん組織を凝固壊死させます。ラジオ波焼灼の場合は、先端に電極がついたボールペンの芯程度の太さの針を腫瘍まで到達させ、焼灼します。

化学療法

分子標的薬のソラフェニブを内服します。